- 2008-02-27 (水) 15:04
- 特集
レポートで指摘された危険情報提供の義務は、コース外は全て危険とする危険告知義務にすりかえられた。そして「危険なコース外」の滑走は禁止され、それを破る者はパトロールに追われた。しかし古くからスキー場外の山を滑ることが行われてきたニセコで、誰もその規則を守るはずがない。危険なはずのコース外にはいつも素晴らしい滑走が待っていた。そこにスキー場が新しいリフトを架け、新雪滑走がより一層手軽なものになったのだ。事故が起こるのは当然だった。そこが本当に危険だったと知るのは、不運な遭難者だけだ。そして死者はもうその危険を語ることができなかった。
結果的に新田レポートは、利益を優先する当時のスキー場の責任回避の道具として使われた。その後のスキー場の事故対策は、事故が起きた場合の責任をどう回避するかに向けられて行った。索道事業者の団体である日本交通鋼索協会のこの基本方針は今も変わっていない。ロープを張り巡らせてコース 外滑走を禁止し、危険看板を設置すれば、スキー場は責任を果したことになる。もし事故が起きても、責任は決まりを破った当事者だけにあるのだ。事故は毎年のように続いた。そして私達は遭難者の発掘を繰り返していた。
しかし続発する雪崩事故を無視できず危機感を持ったスキー場は、現実的な事故防止対策を模索せざるを得ない状況に追い込まれていった。事故に遭う人もスキー場利用者なのだ。やがてニセコのスキー場関係者は現実に目を向け、安全への責任を果すべきではないのかと考えるようになった。
ニセコ山麓の行政機関は当初、観光への悪影響を恐れ、雪崩事故対策に及び腰だった。しかし当時のニセコ町長逢坂誠二氏の努力もあって、安全への積極的取り組みがむしろ良いイメージを持ち、地域の活性化につながると考え始めた。地域独自の事故防止対策として成果を上げている現在のニセコロー カルルールは、このような背景の中で生まれてきたものだ。
ニセコローカルルールはスキー場利用者のコース外滑走のルールだ。しかし国や道は今もこれを公式には認めていない。スキー場に貸しているのはスキー場コースであって、コース外滑走は建前上認められない、というのがその理由だ。ルールではコース外に出るためのゲートを設けている。出口がなければロープをくぐらなければならない。それではロープをくぐる人が絶えず、事故の可能性は高いままだ。ゲートがあればコース外に出る人たちに、コース外はスキー場ではないこと、また一歩ゲートから外にでればそこは自己責任の領域であることなどを説明し、コース外の状況に注意を喚起することができる。事故は小さなミス やその可能性のある行為を放置し、その数が限界を超えた時に起こる。ハインリッヒの法則と呼ばれているものだ。ニセコではその考えに立って関係機関に現状を説明し、粘り強くゲートの必要を訴えてきた。そして一昨年、ゲートは後志森林管理署によって認められた。ただしそれはコース外滑走のための出口としてではない。「 国定公園への入り口」という名目だ。このアイディアを考え、関係機関を説得して回ったのは前北海道後志支庁地域政策課長、貞村英之氏だった。だから道はニセコで大きな役割を果したことになる。
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