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まとめレポート ~ 行列のできるリスク管理相談、北海道アウトドア観光の将来像を描くパネルディスカッション

1月22、23日、北海道大学大学院観光創造専攻との共催で行列のできるリスク管理相談、北海道アウトドア観光の将来像を描くパネルディスカッションを開催しました。

北海道アウトドアの将来を描くパネルディスカッション

非常に充実した内容で、たくさんの学びと気づきをいただいた2日間でした。
参加された皆さんは、それぞれご自身の環境や経験に照らして、様々なことを感じ、考えたことと思います。
ここでは、私なりの視点で考えたことをメモにしました。
文章で詳しくお伝えできればいいのですが、内容が多岐にわたり、ボリュームもとても大きいので、うまくまとめられないため、簡潔なメモにしました。
思い出し、考えを深めるきっかけとして、少しでも皆様のお役に立てるとうれしいです。

◆◆◆

初日は、
「アウトドアでの事故をいかにして防ぐか?」
ということをテーマにした三つのプログラム。

最初は、宮下さんのお話です。
豊富な登山経験、ガイド経験をもとに、説得力のあるお話しをいただきました。

【日々の体調管理】
ヒマラヤ登山のガイドをしたときの事例から、体調管理の重要さの話。
長期遠征では登頂日に最高のコンディションに持っていけるようにすることがポイント。
そのためには、小さなことを見逃さず、全てを丁寧に、いい状態に維持することが大切。
厳しい状況下では、ほんの些細なことが積み重なり、登頂を断念せざるをえない状況になる。
大きな事故も失敗も、ひとつの小さなミスから始まる。

【技術、道具は使い慣れること】
パウダースキーの話題から、雪崩ビーコンなどの道具についてのお話。
道具は持っているだけでは役に立たないばかりか、使い方を間違えるとかえって邪魔になることもある。
必要なときに、すぐに体が動くくらいに日頃からトレーニングする必要がある。
何を知っていて、何を持っているかではなく、「そのときどう動くか」が重要。

【カン】
ガイドは、ピンチのときに、お客さんを守るのが仕事。
そのとき、どうやって危険を回避するのか?
ガイドは、他のみんなが未だ気付いていない危険を、素早く察知しなければならない。
危険を察知するには、「なんとなくいやな感じがする」「この場の流れはよくない気がする」といった第六感が重要。
第六感が働くようにするためには、経験を積むこと。それも常に自分の実力よりも高いレベルの経験を目指すこと。
ピンチの時、あれこれ考えるのではなく、頭を空白にした状態で、体が勝手に動作するようになること。そのほうが間違いが少ない。
体が自然に動くようになるためには、絶対的な経験量が必要。
仕事としてフィールドに行く以外に、自分の限界に挑戦するために難しいフィールドへ出かけることは、ガイドとして必須。

【自分らしさ】
ナショナルジオグラフィック誌のカメラマンをガイドしたときのエピソードから。自分らしさを持つことの必要性について。
一流カメラマンを大雪へガイドしたとき、彼は定番の景色がよい場所にはあまり興味を示さなかった。
一見、どうしてそんなところを撮るのか?と思えるところでしきりにシャッターを切っていた。
出来上がった写真を見ると、今まで見たこともない素晴らしい大雪の姿があって驚いた。
「誰にでも撮れる写真なら、自分は撮らなくてもいい。」というのが彼の考え。
アウトドアガイドも、安全を守る能力を身につけたうえで、自分らしさを持つことが大切。

◆◆◆

宮下さんのお話に続いて、ナレッジコミュニケーションシステムの小林さんによる「判例に基づく保険対応」と、三井住友海上の町田さんによる、賠償責任保険の説明。

【予見可能性】
1998年のニセコ春の滝での雪崩事故裁判から、この事故ではガイドが雪崩の危険を予見可能だったとして、有罪判決になった。
1999年の羊蹄山登山ツアー遭難事故では、登山ツアー添乗員に刑事責任が認められた初のケースとなった。
春の滝の判例は、その後、類似の裁判における判断の根拠として用いられる影響力を持った。

【刑事上の責任】
業務上過失致死傷罪とは、業務上必要な注意を怠り、その過失により人を死亡させるなどした場合。
保護責任遺棄罪とは、間違いのないガイドの故意を問われるもの。状態がわかっていながら、登山者をその場所に置き去りにするなどの場合。
賠償責任保険では、業務上過失致死傷は保険対象となるが、遺棄罪では保険対象とならない。

【賠償責任保険】
北海道アウトドア協会賠償責任保険は、北海道アウトドア協会が団体で加入している保険。会員であることが保険加入の第一の条件。
もし事故が起こったら、速やかに保険会社へ連絡すること。連絡が遅れることで、保険金支払いが難しくなる場合もある。

【質疑応答】
参加者から、「雷に対して、判断を誤り、落雷被害にあってしまった場合の保険対応」について質問があり、その場での回答は保留となりました。
以下が、後日、町田さんからいただいた回答。

賠償責任保険普通保険約款で
「地震、噴火、洪水、津波など天災に起因する損害賠償責任」
については
お支払いの対象外となっております。
雷も天災に含まれますので、
雷があたってケガをした等はお支払いの対象となりません。
質問では雷で天候の変化を予測してガイドできるかどうかというお話であったか思いますが
これは、各々の状況によって過失があったかどうかの判断は異なってくるとおもわれます。
(予測可能であったかどうか?予測可能であってもツアーを強行したのであれば重大な過失でお支払いの対象にならない場合もある)

◆◆◆

そして、初日最後のプログラムは、「事故を防ぐためのコミュニケーション」と題し、セーフティートークが、ガイドが思うようにはお客さんに伝わっていないらしいという研究結果を題材として、ディスカッションを行いました。

【お客さんは危険をわからない】
北海道大学大学院の稲葉さんから、話題提供をいただきました。
稲葉さんの研究結果から、お客さんは日常のアウトドア経験が少ない人ほど、「アウトドアスポーツは危険が伴うもの」と理解しておらず、「ガイドが一緒であれば危険なことは起こらないだろう」と思っているということが示されました。
また、セーフティートークを聞いて、危険について理解したようであっても、実際に危険な目にあったとき、指示通りに行動できない、わからない、とした人が2割以上いました。
従来、スポーツを行う人は危険を認識し、承知したうえで参加しています。
一方、観光ツアーではほとんど危険を伴うものではありませんでした。
ところが、近年、「体験型観光」が普及するなかで、従来の観光ツアーと同程度の危険認識の人が、危険を伴うスポーツの領域に入ってきたことが要因ではないかと考察しています。

【相手に合わせたコミュニケーション】
ガイドは、お客さんに危険を理解してもらう、伝える必要がある。
そのためには、相手に合わせた話し方で、従来の観光との違い、自分の身を守ることを伝える。
まずは相手を理解することが必要。
お客さんは・・・
「危険と思っていない」
「言われても行動できない」
「ガイドに依存している」
「人によって求めているものが違う」等々。

【コミュニケーションのコツ】
言葉だけがすべてではない。
行動で伝える。
一緒に小さい失敗をしてみて、どう行動するかを経験として伝える。
ガイドは余裕を持つことが大切。
時には叱る必要もある。

◆◆◆

続いて、2日目は「北海道アウトドアの将来を描く」パネルディスカッションを行いました。

コーディネーター 敷田 麻実 先生 (北海道大学観光学高等研究センター)
パネリスト
工藤 達人さん (北海道アウトドア協会理事長)
三木 昇さん  (自然分野試験審査員)
岡本 博人さん (北海道観光振興機構企画部長)
鈴木 宏一郎さん((株)北海道宝島旅行社)
大城 康子さん (トレイルライディングガイド、石狩ホーストレック)

このパネルディスカッションでは、アウトドア観光のあるべき姿、ガイドが果たすべき役割や、どうやって人材を育てていくかなど、多岐にわたり濃い内容の話が展開しました。

【アウトドア観光のあるべき姿とは】
たくさんお客さんを呼べば、それでいいのか?
従来のマスツーリズムとは違い、少人数で成立する仕掛けを作っていくことが必要。
地域を見つめなおすこと、お客さんが求めていることを的確に見極める目が必要。
お客さんは、いつもと違うものを求めている。動植物、癒し、などなど。
しっかりと相手の希望を見極めるコミュニケーションが必要。
地域、同業者間など、連携する仕掛けが必要。

【ガイドが果たす役割】
誰でもを対象とするのではなく、サービスを理解し、高い対価を払える意識のある一部の人々を、十分に満足させること。
地域の文化を創造する。地域を元気にする仕事。
お客さんに地域の魅力を紹介すること。例えば、アウトドアのみでなく、近所の農家を紹介することで、お客さんが地域をより身近に感じ、深い愛着を持ってもらえるようになるなど。
地域やお客さんや様々な人を結びつけるつなぎ役。
お客さんとのコミュニケーションから、求めているもの、本当のニーズを引き出すこと。
アウトドアという入口から、北海道の人、自然、文化など、あらゆるものをより深く伝え、人と人を結びつける重要な役割である。

【どうやって人を育てるか】
各人の自己啓発は当然必要だが、それでは不十分。何らかのサポートが必要。
行政が、アウトドアガイドをサポートする仕組みが必要。
自己啓発につながるガイド同士のネットワークがあるとよい。
各地域に小さな集まりができ、それぞれを結ぶような形で全道に広がるネットワークができるといい。
共通の話題をつくり、交流できる機会が必要。

◆◆◆

以上が概要です。
かなりの部分を省いていますが、二日間のダイジェストをお届けしました。
なかなか上手に表現できず、伝わらないことも多いかと思いますが、何かひとつでもここから得ていただけるとうれしいです。

最後に、
私なりに感じた今回の五つのキーワード。

「経験」
「コミュニケーション」
「自立」
「自己研鑽」
「ネットワーク」

是非、みなさんも、これらのキーワードをヒントに、考え、学び、行動していただきたいと思います。
読んでいただき、ありがとうございます。

竹内聖(たけうちせい)
2003年から、北海道アウトドア協会事務局で、アウトドア資格制度の運営やアウトドア協会運営に関する様々な仕事に携わる。
http://takeuchisei.com/

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