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人がすごい、自然がすごい-酪農学園大「北海道アウトドアガイド実習報告」(5)

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釧路湿原自然ガイド講座を終えて

地域環境学科 2年 笹原奈津子

私は今回のガイド講座で、多くを学んだ。ガイドとしての知識は勿論だが、人間として成長したような気がする。
釧路湿原は、私がいつか行きたいと思っていた憧れの地であった。ガイドについて色々と教えてくださったのは安藤さんという、去年酪農学園大学の講演にお越 し頂いた方だ。安藤さんは自分がやりたいこと、好きなことを仕事にしており、私は彼の生き方にとても憧れた。憧れの地で、憧れの方に教えて頂く。なんて素 晴らしいのだろう。今回この講座に参加したのは私のそういった思いからだった。
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釧路での6日間は非常に充実したものであり、時間が経つのが早く感じられた。しかし、釧路で流れていた時間はいつもの時間の流れとは違っていた。別世界と 言えば些かオーバーかもしれないが、空の色や雲の形、雨の音や川の流れ、満天の星に流れ星、太陽の眩しさ、緑の輝き…ひとつひとつに命があるのだと、感じ た。
自分が皆をガイドするというのは、予想外の事態だった。私は自然の中で育ったにも関わらず、植物の名前はわからない。出来る訳がなかった。初めてのガイド を終えて思ったことは、実習先である釧路について事前学習が必要だということと、基本的な植物や鳥の名前を覚えて来なければならないということだ。来年 は、実習に参加する人達で集まり、事前学習やミーティングを行うべきだと思う。ガイドと言えないガイドをした私に、安藤さんは色々なアドバイスをしてくだ さり、また私の長所を見出してくださった。そして、私にしか出来ないガイドをやればいい。と仰ったのである。安藤さんはひとりひとりを真剣に見てくださ り、正面から向き合ってくださった。そんな安藤さんを私はとても尊敬した。
私はこの実習の全てが意味のあるものだと感じた。ガイドの練習だけでなく、ヒッコリーウィンドでの食事やコンサート、トーキングサークルなど、兎に角何か ら何まで新鮮であった。そのひとつひとつに私は刺激され、成長したと思う。以前にも増して仲間達と打ち解けあうことが出来、本音で語り合うことが出来たこ とも、人と接することが好きな私にとって凄く嬉しいものであった。
最後になりましたが、今回お世話になった方々に心からお礼申し上げます。

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人がすごい、自然がすごい-酪農学園大「北海道アウトドアガイド実習報告」(4)

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鶴居村アウトドアガイド実習で私が学んだこと。

地域環境学科 3年 麻生雄司

私は、今年の9月6日から10日にかけて、北海道アウトドア資格の実習として釧路の鶴居村を訪れ、実際に自然ガイドの資格を持つ安藤誠さんのもとで勉強さ せていただいた。鶴居村は、その名のとおり特別天然記念物である丹頂が頻繁に見ることができ、村内には鶴居・伊藤サンクチュアリという丹頂の大給餌場もあ り、毎年多くの観光客が足を運ぶ。また、丹頂以外にも野鳥や植物など自然豊かな鶴居村のフィールドの中で、安藤さんの指導を受けながら私たちは、現実的な ガイドとしての技術の習得以上に人間と自然との関わり方や、ある時は危険な面も持つ自然との接し方について学ぶことができたと思う。
今回、私がガイド実習を受けるきっかけになったことは、大学1年の頃から自然ガイドの資格を取るために継続して勉強してきたからだ。実際、私は大学に入る まで野鳥や植物の名前はもちろん、自然に対する知識を全く持っていなかった。野鳥の名前一つ覚えるにしても、森の中で野鳥の名前と声を一致させるのも一苦 労で、「自分は本当にガイドになれるのか?」という想いが自分の中にあり、次第に勉強もしなくなった。この実習では、私たちは3日目と4日目に複数でチー ムになりお互いにガイドをしあうということを行った。フィールドはヒッコリーウィンドへ続く砂利道周辺の自然を対象に、あらかじめ調べたことをガイドで見 せあい、最後に合宿所で安藤さんから評価をいただくというものだ。野鳥やテキストの勉強はしてきたが、実際にガイドをすることは初めてだった私にとって、 この実習はとても新鮮でなおかつ自分の知識を人に伝えることの難しさを実感した。そして、狭いフィールド内でも沢山の種類の植物が見られ、その知識を覚え て説明するだけでも多くの経験が必要であると感じた。だが、この経験を通じて分かったこともある。それは、ガイドという仕事が自然の知識のみを必要とする のではなく、その知識を参加者へどのように伝えるか、ということだ。ガイドとは最終的には参加者からお金をもらう仕事なので、参加者に対して知識を教える 以上に楽しんでもらうことを重要視する。例えばそれは、最低限度のマナーであったり、大きな声で話すことを心掛けたり、参加者一人ひとりと積極的にコミュ ニケーションをとるなど、参加者の側に立った心遣いである。そのことを意識して、他のメンバーのガイドを注意して見ると、皆個性的でそれぞれが独自の教え 方をしており、テキスト通りの教え方などないのだ、ということを痛感した。そして、例え自分が最低限の知識しかもっていなくても教え方次第でも充分相手を 楽しませることを知り、私は少しガイドになる自信をつけることができた。

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実習の最終日には安藤さん自ら、聖域と呼ばれるキラコタン岬で私たちにガイドをしてくれた。安藤さんは、私たちを連れて歩きながら双眼鏡などの装備を使 い、様々な角度から自然を見せた。普段から、安藤さんはキラコタン岬をフィールドにしているらしく、全く整備されていない草むらや獣道でも躊躇なく進んで いく。プロのガイドとして参加者を案内するということは、自分が案内するフィールドを熟知していなければならない。また、自然に如何に影響を与えずにガイ ドができるかということもガイドの力量が試されるのである。例えば、私たちは歩いている途中、一匹のシマリスを見つけることができた。シマリスは本来、中 々見ることができないため、当然参加者は双眼鏡やカメラで撮影したくなるだろう。しかし、ここで冷静になって考えてみると、元々人間はこのフィールドには 入ることができない。そのため、シマリスにとってカメラをもって近づいてくる人間は恐ろしくて危険な存在なのだ。安藤さんもそのことをよく理解しているた めか、ある程度写真を撮るとその場をゆっくりと離れていった。ガイドは確かに参加者を楽しませることが大事だが、普段は入ることのない自然に入る以上、ガ イドは自然に必要以上の負担や影響を与えないように最善をつくす義務がある。これは個人的に私が感じたことだが、安藤さんはガイドについて話すとき、しき りに「プロの」を付けていた。それは、安藤さんがアウトドアガイドとして仕事をしていることに誇りを持っているだけではなく、プロとして認められているか らこそ、自然に対しても人に対しても責任を持たなければならないことを自覚しているからこそ言えることだと感じた。
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現在、ガイド実習を終え報告書としてこのレポートを書いているが、そんな今だからこそ正直に言えることがある。それは、自分がこのアウトドアガイド実習に 乗り気ではなかったということだ。メンバーは自分以外1・2年生で、ほとんどの人と喋ったことがなく、それだけでも不安でした。実習の内容は当日まで分か らない、鶴居村もどのような町か検討がつかず、さらにはお世話になる安藤さんとは約1年前に、酪農学園大学の講演を聞いただけで全く話したことがないとい う状態。私は、できるならば今すぐにでも帰りたいとも思った。しかし、そのような気持ちも合宿所での共同生活や実習などでお互いに協力し話す機会を持つこ とで、徐々に解消されていった。私が今でも特に記憶に残っていることがある。実習の終わりごろにヒッコリーウィンドの前でバーベキューした際、ストーン サークルという儀式を体験した時で、焚き火を囲み丸く輪になった私たちは、安藤さんを交え自分が今、皆に伝えたいと思うことを一人ずつ話していった。ゆっ くりとした、普段の生活では味わえないような時間のなかで、本音を語りあえたことで、たった5日間だけの実習でも、お互いのことを少し知ることができた印 象深い時間だったように思う。
最後に、お忙しいなか私たち実習生を受け入れ、丁寧に教えていただいた安藤さんを初め、鶴居村でお世話になった多くの方々。そして、頼りなかったにも関わ らず、「リーダー」と慕ってくれ、一緒に実習を受けた地域環境学科の皆。そして、今回の実習に行く機会を与え、尽力してくださった岩井先生にも感謝を申し 上げたいと思います。本当にありがとうございました。

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人がすごい、自然がすごい-酪農学園大「北海道アウトドアガイド実習報告」(3)

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安藤誠さんからのメッセージ

すべてが初めてづくしの酪農学園大学学生実習だが結果として素晴らしい経験と時間を学生有志たちと過ごすことができた。
私の今回の初実習の目的やねらいはいかに彼ら彼女らのいいところや才能、魅力、可能性を見つけ出し本人の自信に繋げていけるか。
生き方やライフスタイルはいろいろな形があり自由なことや将来の夢に明るく向かって歩ける希望を持てるようにすることなど。

まさに無から有を生み出すプロセス。しかし学生たちの可能性は素晴らしいものが溢れていた。謙虚であり大胆。無邪気であり真剣。純粋さの残るところに大人の考え。それは不揃いそして不規則だが素晴らしく輝く宝石のような存在。そんな素敵な学生たちとともに目的を持って過ごしていく時間が素晴らしいのは当然であろう。

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フィールドでの模擬ガイドシュミレーションを何度もやってお互いで講評したり実際に特別保護区の雄大な自然に触れてみたり。
五感と心を刺激する時間や経験が積めていればいいと思う。自然を好きになる自然ガイドならあたりまえだがそれ以上に人を好きになってほしい。そんな私からのメッセージも彼らはどのように受け止めたのだろうか?私は心から学生たちと共に実習のプログラムを通じて皆の感性に感動させられ勉強させていただいたと感謝している。

20代前半学生から社会人へ、子供から大人へ。そんな人生の特別な時期になんらかのかたちで彼ら彼女らの力になれたらと心から思う。
そしてともに学び感動できたらどんなに素敵だろうか。
最後の夜にアラスカのネイティヴアメリカンに習ったトーキングサークルでも皆静かに熱く語ってくれた。自分自身に友人に親に。
焚き火の炎を囲み皆で静かに語らう。自分の思いや友達や同世代の思いや意見を共有し考えること。
戸惑いながらも全員で進めることができたさまざまなプログラム。

私も学生たちと一緒に未来に向かってともに歩けるような時間や実習を組み立て実行していけたらと思う。
試行錯誤はあるだろうが初心、今回学生たちから感じ学んだ素晴らしい感性やフィーリングは変わらず失われないように大いに実習に生かしていきたい。

この素敵な民間と大学の橋渡しをされた熱意と暖かさの岩井氏に最大の感謝の言葉を。
自ら考え決断し積極的に参加した勇気ある学生らに心から感謝の気持ちを添えて。


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人がすごい、自然がすごい-酪農学園大「北海道アウトドアガイド実習報告」(2)

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「釧路湿原自然ガイド講座」で思ったこと

地域環境学科教員 岩井 洋
(北海道アウトドアガイド資格制度担当)

北海道アウトドアガイド資格制度の自然ガイド資格取得への支援として、「釧路湿原自然ガイド講座」が9名参加のもとで行なわれました。9月6(木)14: 00に鶴居村教育委員会合宿所に集合し、そこを根城に9月7(金)・8(土)・9(日)・10(月)の4日間講座を行い、参加者のつごうで半数は9月10 (月)に、残り半数は11(火)に鶴居村を離れました。講座の4日間は、毎日9:00~10:30、10:40~12:10、14:30~16:00と指 導が行なわれ、270分×4日間の全体で18時間という非常にハ-ドな内容でした。
この企画が本学でも初めての試みなので、私も9月6日に鶴居村に出向き、指導していただく安藤さんと、宿泊所を提供してくださった鶴居村教育委員会に挨拶をし、かつ実習開始への下準備を手伝いました(手伝ったつもりです)。
6日早朝に江別を発ったときは曇り空だったのですが、釧路に着いた頃から雨が降り出し、釧路駅でレンタカ-を借り鶴居村に着いたときには激しい雨になっていました。
約束の時間に皆合宿所に集合してくれ、安藤さんも来てくれました。久しぶりの安藤さんお元気そうで、頼もしく感じました。それからも何だかんだするうち に、はっと気づくと帰りの釧路発特急の発車時間が予想外に早くに迫っているではありませんか。地理に全く不案内なので、釧路-鶴居間の移動時間を短めに考 えていました。失礼も省みず、あわてて雨の中を合宿所から飛び出ました。しかし、借りた某会社の某車種は「環境に優しい!」が売りなのですが、普通の車と は微妙に違うシステムで、エンジンがなかなかかからないのです。時間が迫っていると思う心も知らぬげに、慌てれば慌てるほどエンジンはいっこうにかからな いのです。結局は釧路駅には何とか間に合ったのですが、大変でした(某車の面倒くさいシステム何とかならないんでしょうか!!「環境に優しい!」に引かれ て、我が家での次回の車購入では前向きに検討中なのですが…)。
しかし鶴居村の合宿所で非常に気になったのですが、参加した学生諸君が皆いつもと違ってひどく寡黙で重苦しく、顔付きが浮かなくてなにかしら全体に不安感 が漂っているではありませんか。合宿所の状態が期待していたほどにきれいではないためか、お互いはじめてのもの同士もいるということのためなのか、あるい は、合宿という共同での寝泊まりが始めての経験であるためなのか、あるいは食事が自己調達であったり、湿原で朝から夕方までガイド実習が待っているためな のか。しかも雨中のこの村この雨この合宿所、この人たち・・・・。そして「おっかなそうな!?」安藤さん…。
私は、彼らの大きな不安と鬱屈したやるせない思いを背に感じながら、わが子を厳しい世界にあえて置き去りにするような思いで、後ろを振り返らぬようにして 釧路に戻りました。帰りの特急の中でも不安は残り、皆は最後まで本当にやりとおせるのかなという思いや、私が言い出したこの企画良かったんだろうか等等、 汽車の窓外に流れ行く雨中の風景を眺めながら、さまざまな思いが錯綜し続けました。その心配は、次の日も次の日も合宿中も消えることはありませんでした。

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しかし大学での夏休みでも学期中と変わらぬ忙しさにかまけるうちに、何時の間にかそれも忘れ、気が付くと「釧路湿原自然ガイド講座」は終わっていました。
夏休みもそろそろ終わるという頃に、参加していた一人の学生が私の部屋を訪れました。私は悪い予感がし、嫌な報告を聞かねばならぬのかと覚悟を決めて緊張 して身構えていました。ところがソフア-に座ったとたん彼女は、満面の笑みを浮かべて、鶴居村での「安藤学校」(「安藤シュ-レ」-ドイツ語です!!)が どんなに楽しくためになったかについて、とうとうと述べ始めたのです。安藤さんの、学生の人間性を豊かに発掘する見事な手腕や、釧路湿原での感動的な体験 について堰を切ったかのように次々と話し始めたのです。彼女は以前から浮かない表情の学生でしたが、大変に明るく積極的な学生になっていました。
その後会う参加学生がことごとく、彼女と同じく講座中にあったことを伝えたくてたまらなかったように、安藤さんと過ごした豊かな充実した時間、安藤さんの 人間的な素晴らしさ、釧路湿原に大らかに生きる安藤さんの素敵な生き方について生き生きと熱っぽく伝えてくれました。そして「釧路湿原自然ガイド講座」に 今後もぜひ参加したいと口々に言ってくれました。彼らの表情は、あの鶴居村で講座開始前日に見せていた重苦しい表情では全くなく、明るい晴れやかな顔でし た。

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一期一会とよく言われますが、それは人生における人との出会いの豊かさ貴重さを言います。豊かな人間性に満ちた人との出会いは、人生の宝物です。見るから に「やさしい!!」安藤さんは、その風貌の底に本物の豊かなやさしい人格を有しています。安藤さんを見ていると、人の愛というものはそれが本物であればあ るほど、「愛している」という言葉にはならないように思われ、具体的行動のなかに滲み出てくるものだと思えてきます。そして自然を本当に愛する人は、人を も本当に愛する人だとも思えてきます。本物の自然ガイドとは人間ガイドであり、自然教育は人間教育なのです。そのことを、今回の「安藤シュ-レ」で私も学 ばせていただいた次第です。
先日安藤さんに来年度の実施についてお願いしたところ、「参加者が一人でも私はいたします。」と快諾してくれました。
最後になりましたが、安藤さんの奥様にもそして娘さんにも学生達がお世話になったことについて、この場を借りて心からお礼を申し上げたく思います。

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人がすごい、自然がすごい-酪農学園大「北海道アウトドアガイド実習報告」(1)

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「人がすごい、自然がすごい」

これは、北海道アウトドア協会のポスターにあるキャッチコピーだ。ポスターは、釧路湿原の写真に筆文字でこのキャッチが書かれている。

実は先日、まさにこのキャッチコピーを現実に映し出したような、熱いレポートを送っていただいた。そのレポートとは、酪農学園大学地域環境学科の学生たち が、釧路湿原に程近い「ウィルダネスロッジ・ヒッコリーウィンド」でネイチャーガイドをしている安藤誠さんのもとに実習に行ったときの報告書である。
学生の単なる夏休実習のレポートならば普通は面白くもないのだが、このレポートには正直、驚いた。
世間では「ゆとり世代」と呼ばれる年代の彼ら。「自分の得になることしかしない」「冷めている」など、批判的に評価されている世代だ。
しかし、彼らのレポートから伝わってくるものには、全ての若者をひとまとめに評価している世間の声とはかけはなれた「熱さ」があった。何かに目覚めた感動が伝わってきた。

私が得た大切なものは、自然に対する関心・興味・尊敬など、【自然を感じる心】と【仲間】だ。それらは実習後の今も変わることなく存在し続けている。
(大場一樹君の報告から)


こんな言葉を素直に発することができる若者たちがいる。
北海道の人は、本当に「すごい」のだ。改めて、そう感じた。

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では、次のページから、その報告書の内容を漏らさず掲載するので、是非、お読みいただきたい。彼らの言葉から、きっとあなたにも得るものがあるはずだ。

酪農学園大学地域環境学科「北海道アウトドアガイド実習報告」
5日間のスケジュール

9月6日
14時合宿所集合→安藤さんとご対面オリエンテーション→買出し→夕食→ヒッコリーウィンドで座学(装備等)

9月7日
鶴居村消防署でファーストエイド講習→昼食→合宿所で座学(ガイドの救急、熊等)→川や畑などで自然観察(双眼鏡の使い方、樹木等)→ヒッコリーウィンドまでの道でガイド講習の下見→図書館で各自勉強

9月8日
ガイド講習(3人グループ)→安藤さんガイド→昼食→合宿所で座学(講評等)→自由時間(各自下見or図書館)→夕食→ヒッコリーウィンドでよしだよしこさんコンサート

9月9日
図書館集合→晴れてきたので予定変更→ガイド講習(6人グループ)→昼食→合宿所で座学(講評等)→安藤さんご両親の畑で芋ほり・ガラス見学→ヒッコリーウィンドで焚き火BBQ(野外調理、ホスピタリティー学習)トーキングサークル

9月10日
安藤さん宅集合→安藤さんガイドでキラコタンガイド実習→原っぱで昼食→合宿所で解散

9月11日全員帰宅

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北海道のなだれ事故 資料

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資料1 ニセコなだれ情報第22号1月9日火曜日(ニセコ雪崩調査所が積雪調査中に発生させた雪崩)

8日、湯の沢南東面標高800mで断面試験中、厚さ60cmのスラブ雪崩が2回発生。発生は1/4層付近。標高1000m以上山頂付近で北西18m/sの風雪が続いている。風下斜面にはふきだまり(スラブ)が引き続き堆積。気温、風速の推移、8日断面観察など各データから重くスラブ化し不安定。朝7時ヒラフパトロール調査も同様の見解。立ち入り禁止区域南東斜面、東尾根雪庇斜面、大沢(アンヌプリボウル)、鉱山の沢(バックボウル)は雪崩の危険が高い。各山頂ゲートはクローズする。1/4層は霜系の層であり、9日も重いふきだまりの下で弱層となっている。事故は吹雪やその直後に起る。新雪を求め安易にロープをくぐってはならない。大勢が真似て事故の確率を高める。パトロールの意見を聞くこと。6番モイワゲートは開いていない。スキー場は利用者の安全に、常に関心を持っている。森の中の雪は良い。
Yesterday, during layer observation in Yu no Sawa’s south-east face at 800m, 2 major slab avalanches (60cm deep) from 1/4 layer has occurred. A strong wind of 18m/s is continuing above 1000m. Drifted snow is accumulating in leeward slopes. The temperature, the wind speed and the layer observations all proves that the snow slabs are heavy and unstable today. Hirafu patrol’s observations have also come to the same conclusion. Very high dangers of avalanche in south-east slopes in off limits areas, cornice slopes in Higashi One (east ridge), O Sawa (Annupuri bowl) and Back Bowl. Peak gates will be closed today.
The Jan 4th layer is a frost layer, and still is a considerable weak layer under today’s heavy wind drifted snow. Most of the accident happens during or right after a storm. Do not duck ropes to seek fresh snow as many people will follow and increase the chance of an accident. Ask for advice from the Ski Patrol. Moiwa Gate (No. 6) is still closed. The resort is always conscious about the users’ safety. The snow in the wood is good.

資料2 なだれ情報58号2月14日水曜日(八甲田山事故当日のなだれ情報)

アンヌプリ1100m風速データ及び海上保安庁データの推移から標高1000m以上では午前中に南東の風が強まる。山頂ゲートは状況の変化により閉じられる。パトロールの指示に従うこと。事故は悪天候の中で起る。ロープを安易にくぐりコース外に出てはならない。大勢が真似て事故の可能性を高める。今夜半から明日にかけて山は暴風雪となり、新雪のふきだまりが発達する 。吹雪の最中や直後のふきだまり(スラブ)は雪崩の巣となる。2月14日積雪表面は滑走により荒れているが、その上に「短時間で重く厚いふきだまりができれば」、2/14層は雪崩の発生層となる。降雪推移に注意。
According to Annupuri anemometer data and Japan Coast Guard wind data, a SW wind is forecasted to start picking up before noon. The peak gates might close later today depending on weather conditions. Follow the ski patrol’s instructions. Most accidents occur in poor weather. Ducking the rope must not be taken too easily. Many people would follow those tracks and increase the chances of an accident. The mountain will be engulfed by a huge storm from tonight to tomorrow, snowdrifts will develop rapidly. These snowdrifts (slabs), during or right after the storm, are the most unstable snow and is full of avalanche potentials. Today’s snow surface might be tracked out and bumpy, however would potentially become an avalanche trigger layer, if heavy and thick snowdrifts develop suddenly. Be conscious and mind about the snowfall transition from today.

資料3 なだれ情報59号2月15日木曜日
立ち入り禁止区域の「春の滝」「水野の沢」及び「湯の沢」、エリア外山岳地帯のアンヌプリ大沢及び鉱山の沢標高1200mトラバースライン以下、東尾根全域とモイワ見返り坂、五色温泉方面の雪崩リスクは高い。降雪推移と断面観察から、2/10層以上には低気圧前面降雪に特徴的な新雪結晶層があり(2/14-15層)、14日夜半までの南東の風雪による「重いふきだまり」の下で弱層となっている。朝にかけて低気圧中心の接近で風が弱まっている。低気圧の通過に伴い今後再び北からの風雪が強まり、ふきだまりが発達する。なだれ事故は悪天候の中、ふきだまり(ウインドスラブ・風成雪)の発達中に集中する。吹雪が収まり青空が出て 雪が安定するまで危険は続く。ゲート開閉は未定。パトロールの指示に従うこと。ロープをくぐってはならない。
VERY HIGH AVALANCHE HAZARD in the strictly off limits area (Haru no Taki, Mizuno no Sawa, Yu no Sawa) and the out of bounds backcountry area of O Sawa, Kozan no Sawa (Back Bowl), Higashi One (East ridge), Mikaeri Zaka (between Moiwa/Annupuri) and North Face towards Goshiki Onsen. The whole mountain is in extreme condition. According to snowfall transition and snow pit observations, a typical layer of new snow formed by the warm front of the passing low pressure system is present above the 2/10 layer. This layer is transforming into a weak & unstable layer underneath the heavy snowdrift developed by last night’s strong south-easterly wind. The wind is now mild because the center of the low pressure system is right above Niseko area, as the center moves east, a strong northerly wind & snow will start to pick up. The snowdrifts will develop drastically. Avalanche related accidents mostly occur during a storm while wind effected snowdrifts gets built up rapidly. Extremely hazardous condition will remain until the storm calms down and the blue sky reappears. The opening/closing of the gates is not decided yet. Seek for advice from the Ski Patrol. Do not duck ropes!

資料4 なだれ情報89号3月18日日曜日(積丹岳事故当日のなだれ情報)

6時山麓-6℃雪、山頂7時北西15m/s、1100m風速データ6時北西10.4m/s。17日午後からの降雪は風雪に変わり、標高800m以上では風下にふきだまりが発達。降雪推移から3/17層からの雪崩リスクが高まり始めている。東尾根方面は北風の影響でクラストし始めている。ノートラックの急斜面に飛び込む前に雪崩の危険を考えること。昨日の斜面が今日も安全とは限らない。標高1000m以上は弱い風雪が続き視界が悪い。各ゲートは通常通り開かれる。ゲートから出る前にパトロールの意見を聞き装備を確かめること。用心すれば事故は防げる。雪崩の危険を軽視してはならない。谷底にトラックをつけないこと。
-6℃and snowy at the base at 6am. 15m/s NW wind at the peak at 7am, 10.4m/s NW at 1100m at 6am. The snow from yesterday afternoon has been effected by the wind and made some new snowdrifts to develop in leeward slopes below 800m. Looking at the snowfall transition, avalanche hazard from 3/17 layer is now considerable. The Northerly wind has made the surface crusty in Higashi One. Be conscious about the avalanche danger before dropping into a steep slope. The snow condition changes day by day, a slope is not necessarily safe today just because it was safe yesterday. The visibility above 1000m is poor. All gates are scheduled to open. Ask for advice from the ski patrol and double check your equipment before you go through the gate. Accidents can be prevented if a minimum cautiousness is involved. Do not underestimate the danger of an avalanche. Avoid leaving tracks in the gully bottom.

資料5 ニセコローカルルール

ニセコローカルルール

ニセコローカルルールはスキー場エリア外を滑走する人々と、全てのスキー場利用者の安全のために作られた地域の公式ルールです

1.『完全立ち入り禁止区域』にはいかなる理由があろうと入ってはならない
湯の沢、水野の沢及び春の滝は、ニセコローカルルールによる「完全立ち入り禁止区域」です。これら3つの谷を滑走するとリフト券を没収します。

2. ロープをくぐってはならない
ロープをくぐる行為を禁止します。これらの行為を行うとリフト券を没収します。エリア外へはルールで定められたゲート(国定公園への入り口)から出なければなりません。

3. スキー場コース外は安全管理が行われていない
ニセコアンヌプリ山頂を含むスキー場エリア外は国有林または道有林であり、国定公園です。エリア外はスキー場によって管理されていません。ニセコローカルルールはエリア外滑走、山頂登山には危険が伴い、自己責任が問われることを明らかにします。

4. ゲートが閉じられている時はコース外に出てはならない
スキー場はニセコローカルルールに基づき、高い危険が予想される日にはスキー場利用者の安全のためにゲートを閉鎖します。

5. ニセコなだれ情報
「ニセコなだれ情報」は当日の雪崩危険度を評価する、ニセコローカルルールの公式情報です。この情報はリフト乗り場、各ゲート及びインターネット上に掲示されます。

6. コース外での捜索救助費用
エリア外で事故が発生し、スキー場パトロールが捜索救助活動を行う場合、スキー場はニセコローカルルールに基づき、当事者に実費を請求します。

7. スキー場及び山岳パトロール
ニセコローカルルールは利用者がスキー場パトロール、後志(しりべし)山岳パトロールの指示に従うことを求めています。

8. ルールの趣旨
スキー場と地域はニセコローカルルールの精神に基づき、利用者の自由を尊重するとともにその安全に重大な関心を払っています。

ニセコローカルルールはニセコアンヌプリ地区なだれ事故防止対策協議会、ニセコスキー場安全利用対策連絡協議会、ニセコフリーパスポート協議会、後志地方山岳遭難防止対策協議会によって定められました。

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北海道のなだれ事故 7

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二次災害の危険に対するニセコの考えは昔から明確だ。現場指揮者は自らの責任で雪崩の規模、デブリの状況などから危険評価を行い、二次雪崩の有無を判断して捜索を始める。そして生存の可能性がある限り捜索を続ける。救助技術で最も大切なことは、助けようとする気持ちなのだ。現在、ニセコでは各スキー場山頂駅舎にステンレスのゾンデ棒と、鋳鉄スコップを保管している。アルミスコップは雪崩が止まった直後、すぐに硬化するデブリには歯が立たない。ブレードの付け根から折れ曲がってしまうからだ。

ニセコのように標高差500Mに満たない小さな流域の谷では、事故に結びつく大規模な雪崩が起こればその殆んど全てが落ち、二次雪崩の危険は低下する。しかし北アルプスや日高山脈のような広大な流域と標高差のある山では状況は異なる。これらの山で雪崩が起きた直後は二次、三次雪崩の危険が続くことを忘れてはならない。たとえ見張りを付けても、時速100KMを超える雪崩から逃げることはできない。そもそも冬山登山では雪崩通路となる沢筋を、何の疑問も持たず登路として選び、また幕営することが非常識なことだ。しかし現代はこれらの雪崩地形が山岳スキーヤーやスノーボーダーによって当たり前に滑られる時代であり、その写真が雑誌を飾る。

雪崩地形だからと言って雪崩がいつも起こるわけではない。むしろなかなか起きない。その危険を判断し、避けることがスポーツとしての冬山登山や急斜面滑降の素晴らしさであり難しさだ。しかし人々は危険を過小評価し、やがて雪崩は起きないと思い込んでしまう。それを繰り返すうちに事故に遭ってしまうのだ。

私は1992年、パキスタン・カラコルムのラカポシという山で間一髪、巨大な氷河雪崩から逃れたことがある。懸垂氷河の崩壊は周期的に起こる。しかし予測はできない。そして発生すれば、時速200KMを超える雪崩から逃れることはできない。

その日、ナイフリッジとキノコ雪のルートに行き詰まった我々は氷河に下降し、クレバス帯にルートを求めていた。いつもより気温が高いと感じ、引き返しはじめた瞬間、標高差2500M上の懸垂氷河が轟音とともに崩れ、雪崩が始まった。雪崩の到達まで20秒はない。我々は必死で隠れる場所を探し、近くのベルグシュルンド(氷河の山側亀裂)に落ちる岩稜の陰に飛び込んだ。

直後に雪崩が襲い掛かってきた。無限に続くかと思える爆風に吸い込まれそうになりながら、我々は窪みの雪に打ち込んだピッケルにしがみついて耐えた。それは恐らく新幹線の屋根に、吹雪の日にしがみついているようなものだった。助かったのは、今考えても奇跡としか思えない。その時のザイルパートナーは遠征中に双子の赤ん坊の父親になる男だった。きっとこの子供たちが父親を救ったのだろう。

14回目のニセコ雪崩ミーティングが、12月22日にニセコで開かれる。今年の標語は「大切な人を失わないために」だ。私は雪崩の危険を軽視しない。そして事故は防止できると信じている。不可抗力の事故などないのだ。

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文:新谷 暁生(しんや あきお)
ニセコ雪崩調査所所長、シーカヤックガイド、登山家
1947年札幌生まれ。札幌西高、酪農学園大学卒業。
ネパール、パキスタン、中国、アンデスなどの山々を登る。1986年ヒマラヤ・チャムラン、1992年カラコルム・ラカポシで登山隊長を務める。1988年三浦雄一郎アコンカグア登山隊、1993年関野吉晴グレートジャーニーなど現地でのサポートを行う。1996年9月ホーン岬遠征。冬期のホーン岬を世界で初めてカヤックで漕破する。2000年5月、2001年5月アリューシャン遠征。知床半島のシーカヤックツアー「知床エクスペディション」は91回を数える。冬期はニセコでスキーシーズン中の毎朝「ニセコなだれ情報」を発信し、雪崩事故防止のための活動に取り組んでいる。ニセコモイワ山麓で30年にわたりロッジウッドペッカーズを経営。

新谷暁生氏の著書
73回目の知床
バトル・オブ・アリューシャン
アリュート・ヘブン

関連リンク:カミホロカメットクの雪崩事故現場に居合わせた登山者の記録(湯口公氏)

北海道のなだれ事故 6

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当時ニセコの取り組みを否定した科学的知見に基づく雪崩知識の普及は、今も講習会などを通じて全国的に行われている。研究者やなだれ専門家は事故が起これば現場に急行し、その原因を究明することを繰り返している。それが学問的に無意味とは思わない。しかし事故後に雪崩発生原因がわかり、ハ ザードマップに雪崩発生位置を記載しても、死者はもう帰ってはこないのだ。
この「弱層」に対する考えは最近、専門家の間で揺らいでいるようだ。その調査や見解を報道などで見ると、信じられないコメントがある。「急激に降り積もる雪は自重に耐え切れず、弱層がなくとも雪崩れおちる」というのはつい最近の高名な雪氷学者の意見だ。これは今まで依拠してきた弱層理論の例外について述べたものだ。例外を言うのならその学説は誤りということになる。

日本の雪崩講習会は科学研究の成果としての弱層理論を柱に、それを信奉する人たちによって行われてきた。雪崩知識は広く普及した。しかし事故は起こり続けている。事故に遭った人たちもその多くは講習会で雪崩知識を身につけた人のはずだ。そのような経験者や冬山のベテランと呼ばれる人たちが 事故を起こし、人命が失われている。この10年の講習会の雪崩教育を検討した時、講習内容の変化、またはすり替えがあることに気づく。中にはかつてニセコの取り組みを批判した人たちが、全くニセコと同じ方法を海外の文献から引用していたりする。そのような現状を見ると私には今日の講習会そのものが無意味に思えるし、その目的に対して疑問を憶える 。

最近、雪崩ビーコン(アバランチ・トランシーバー)を持って山に入ることが常識のように言われている。北海道警察もそれを持たない非を指摘している。ニセコでも勿論、利用者にビーコンを持つことを奨めている。過去のニセコの事故捜索は、全てゾンディーレン(ゾンデ棒を使う捜索)によって行 われてきたが、もし埋没者がビーコンを身につけていれば捜索時間は大幅に短縮されただろう。私は15年以上前からスキーツアーをする山岳ガイドにビーコンを持つことを奨めて来た。お客の安全を考える時、最善の策を講じるべきだからだ。今後、更にビーコンが普及すれば生存救出の可能性は高まる。しかしビーコンを所持していなかったばかりに捜索隊を二次災害の危険に晒した、と非難するコメントを見ると、 それは違うと思う。ビーコンを持つことはけっして冬山登山の常識ではない。

雪崩ビーコンの歴史は古い。この道具はアルプスの山岳戦で開発された。敵の背後に大砲を打ち込めば雪崩が起き、生き埋めにすることができる。ヨーロッパにおける第一次大戦での戦死者は、戦闘によるものより雪崩による死者の方が多かったという。第二次大戦後、スイスでは山岳兵を雪崩の危険か ら守り、捜索を容易にするために雪崩発信機の開発が進められた。そしてそれはやがて氷河スキーの事故からスキーヤーや登山家を守るための道具として用いられるようになった。

ビーコンは雪崩に遭遇する可能性の高い山岳スキーヤーやスノーボーダーにとっては必携の道具だ。そして時には冬山登山者にとっても命を救う道具になるだろう。しかし持っているからといって雪崩を避けられるわけではない。私はビーコンを持つことを知識と勘違いし、講習会に参加したことを経験 と錯覚する今日の風潮に危機感を持っている。雪崩ビーコンを盲信してはならない。また持たないことを非難すべきではない。冬山に入るのであれば、事故に遭わないために準備しなければならないことは他に山ほどある。

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北海道のなだれ事故 5

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最も危険な雪崩は、厳冬期に多発する面発生表層なだれだ。この雪崩は吹雪がつくるふきだまりの急斜面の、広い範囲が同時に崩れて起こる。ニセコなだれ情報は、ふきだまりの発達と安定から危険判断を行う。発達途中、つまり強い吹雪の最中に危険は最も高まる。吹雪が止んでもふきだまりはすぐに は安定しない。また安定に要する時間は標高や斜面の向きによっても異なる。そのためニセコでは風雪が収まりリフト運転が再開されても、ゲート開閉が慎重に検討される。

今年2月14日青森県八甲田山で起きた雪崩事故は、ゴンドラ駅舎で30m/sの風が記録される風雪の中で起きている。3月18日にはスノーモービルの一行4人が積丹岳で亡くなったが、当日山は強い冬型の吹雪が続いていた。今回の上ホロカメットク山の事故は、11月21日から2日間続いた風雪の後で起こっている。これらの事故 事例からもわかるように、多くの事故は吹雪かその直後に起こっているのだ。

事故が起こるたびに事故防止が叫ばれる。そして事故原因が議論される。しかし事故はすぐに風化し再び事故が繰り返されて行く。大切な人を失った遺族の悲しみは計り知れない。この連鎖は断ち切らなければならない。
以下に関連する先シーズンのニセコ雪崩情報を抜粋してみる。この情報はニセコの全スキー場に掲示され、インターネットでも見ることができる。スキー場に掲示される情報には断面観察データ、海上保安庁及び気象庁データ、アンヌプリ1100m風向風速データなどが適宜載せられる。雪崩に関心を持ってもらうためだ。尚「なだれ」を「雪崩」としていないのは、誰にとってもわかりやすい情報であることが目的だからだ。

雪崩は予測できる。不可抗力の事故などない。そして自然の中の危険は誰に頼るでもなく自分で予測しなければならない。それは動物的勘などという曖昧な自信であってはならない。知識があるという過信や驕りが結果的に事故を呼び寄せているということを知るべきだ。

雪崩は吹雪の最中と直後に起こりやすい。これが常識であることを知っているだろうか。少なくともこれはヨーロッパの登山家の常識だ。しかし日本では違うようだ。ニセコで雪崩情報が行われ始めた時、学識経験者や雪崩専門家に批判されたのは、この「吹雪が雪崩の原因をつくる」という考え方だった。1997年に京都で開かれた日本雪氷学会の雪崩セミナーで、「あなたは弱層という言葉をご存知か」と雪氷学者に発表を封じられ、ニセコの方法は否定された。理由は「科学ではない」というものだった。当時の専門誌には「科学でないものは滅びる」とまで書かれた。データに基づかないものは科学ではない。その通りだ。しかし私は必要に迫られてこの問題に関わってきた。そして今も変わらずに、科学的態度で情報の作成や事故防止に取り組んでいる。

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北海道のなだれ事故 4

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現在ニセコではルールに基づき、客観的に危険が予想される日にはゲートを閉じ、コース外に人を出さないようにしている。ロープをくぐる人は相変わらず多い。しかしそれが原因する結果を説明することで、そのような人は減り始めている。ニセコローカルルールは定着し始めたと言える。

勿論、中には自由の侵害であると、ルールを守らないことを公言する人たちもいる。しかしこのような登山やテレマークスキー愛好者の一部の行動や言動は自由の履き違えでしかない。ニセコローカルルールはスキー場のルールであって山のルールではない。スキー場を利用して安易に山に入ろうとする のなら、先ず多数の安全のために作られたこのルールの意味を理解し、守るべきなのだ。そもそもここが山ならルールは必要ない。山には他人に強制されるルールなどないからだ。ニセコローカルルールはここがスキー場であるが故の、やむを得ない理由から作られたルールなのだ。
標高1308mの山の1150mまでリフトが架かるこの山では、天気が良ければ誰もが山頂に登れるし、どこでも滑ることができる。道具や知識、経験を問わず、その権利がここでは認められている。その上で地域は全てのスキー場利用者の安全に関心を持ち、その自由を可能な限り尊重しようとしている。これがルールの根底に流れている考えだ。

ルールが浸透し始めた理由はそれが信頼に値し、滑り手の安全を守るとともに、自由が尊重されていることを大勢が認めた結果だと思う。「客観的危険」についてもここでは共通の理解が生まれ始めている。客観的危険の予測とは、雪崩が起こりやすい条件を具体的に示すことだ。

ニセコなだれ情報が出されるようになって15年経った。この10年ニセコの事故は減り始めている。死亡事故は1998年1月28日の春の滝事故と1999年3月13日の東尾根事故以来、起こっていない。山域も気象条件も異なるから一概には言えないが、日本各地で雪崩事故が増える傾向にあるのに対し、かつてあれだけ事故が多かったニセコの雪崩事故は確実に減り始めている。

ニセコでは主に降雪推移から雪崩危険評価を行う。ニセコなだれ情報は毎朝8時にスキー場に掲示される。積雪断面観察(ピットチェック)は毎日行われる。これは当日のなだれ情報の適否を確認する重要な作業だ。しかしピットチェックや弱層テストだけで危険判定はしない。初心者に雪崩発生の仕組みを説明したりするにはわかりやすい方法だが、これだけで雪崩リスクを判定することは殆んど出来ない、というより危険だ。雪崩の発生にはあまりにも不確定要素が多いからだ。また雪崩は人がかかわって初めて事故になる。この人的要因を無視すれば、情報は信頼されない。

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